こんにちは、二見事務所の山下です。
今回は、私の銀行員時代の苦い思い出をひとつ・・・。
新卒で第二地方銀行に入り、
ふたつ目の勤務地として、高松の支店で働いていたときの話です。
当時、26~27歳の頃。
まだまだ知識も経験も未熟な私は、融資先に試算表の提出を依頼していました。
当面の融資申し込み等がなくとも、自分自身の勉強のため、
そして、お客様である法人をより理解して、いざというときに役に立てるようにです。
そういった理由ですから、特に強制はしませんでした。
強制できない、と言うほうが正確でしょうか。
銀行としての要求ではなく、私の個人的なお願いですから。
それでも、ほとんどのお客様が快く応じてくれました。
そして、「良いアドバイスをしてほしい」とのお言葉をいただきました。
そんななか、あるお客様の経理部長が、嫌な顔をしました。
銀行としての依頼ではないこと、私の個人的なお願いあることを説明し、
お詫びをしたうえで、その場は終わりました。
それから数日が過ぎた月末。
そのお客様は、全ての預金を融資と相殺し、
足りない資金は他行から振込をして融資を全て返済しました。
営業の外回りから帰った私は、経理部長に電話。
理由を聞いたところ、
「我社に対して、試算表を出せなんて、失礼にもほどがある」
との返答でした。
銀行の月末における預金量・与信(融資)量は、
支店長会議などで課されたノルマがあり、
月末での突然の預金引き出しや融資返済は、支店にとって大ダメージです。
当然のことながら、私は支店長に大目玉を喰らいました。
しかしながら、私には理解できませんでした。
決して、強硬に依頼したわけでもない。
協力の意志がないと分かったら、すぐに詫びた。
他のお客様には、むしろ喜ばれていた。
(資料を要求された不快感より、自社のことを気にしてくれている、
と評価してくださっていたようです)
なのに、なぜ、この会社だけが、こんなことに?
その答えは、随分時間が過ぎたのちに判明しました。
その法人が、2009年に民事再生法適用の申請をしたのです。
飽くまで推測に過ぎないのですが・・・。
私が銀行員であった頃、既に試算表を「提出したくない」状態だったのではないでしょうか。
決算書は各銀行に提出が必要なので、前もって準備ができても、
試算表を急に言われると、取り繕うことができなかったのではないでしょうか・・・。
私が試算表を依頼したのを、
「何か、感付きやがったのか・・・?」
と思ったのではないでしょうか。
そう考えれば、納得いきます。
私がした説明や謝罪も、
「こんな若造が、個人的に試算表を依頼するなんて有り得ない。
下手な言い訳しやがって・・・。」
と思ったのだろうと考えると、スンナリ理解できます。
まさしく「疑心暗鬼」状態だったのでしょう。
今般の金融円滑化法では、銀行に対してコンサルティング機能を要求しています。
そう考えれば、支援してくれる銀行に対しては、必要な書類は提出すべきでしょう。
何を提出すべきで、何が提出する必要がないのか。
経営者の皆様が、必ずしも理解している訳ではありません。
また、税理士も全ての税理士が銀行対策に精通しているわけではありません。
しかしながら、全てを銀行に任せておくことも、私は出来ません。
私は元銀行員であり、去年「財務金融アドバイザー」資格を取りましたが、
今後も、もっともっと研鑽に励みたいと思います。
おしまい